高校生のみなさんへ〜こわくないスピーキングテストのススメ〜

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みなさんこんにちは。事務局2年のいっちーです。
昨年度も読んでくださった方々には8ヶ月ぶりにお会いすることになります。
この文章が投稿されるのはおそらくオリンピックも終盤に差し掛かった頃かと思います。
暑い日が続いていますが、これを読まれるみなさんはお元気でしょうか。

さて、昨年度私は「日本語を学ぶということ」というテーマで、大学生がどのように日本語を捉えるべきなのかについて書きました。然る方面からは多大な好評をいただいたのですが、他方でスタッフブログらしからぬことを書いてしまったことに多少の悔恨もありましたので、今回は「高校生のみなさんへ」ということで、今年度から全学部に拡大されるというスピーキング試験について書いて参りたいと思います。

私は国際日本学部に在籍していますが、東京外国語大学にBCT-Sというスピーキングテストが導入されたのは、ちょうどこの学部ができる2019年度入試からでした。
外大の柔軟性というか、一度目標を見据えた後のスピードの速さと言ったらすごいなと、入学してこの1年半、何かある度に思います。ただ高校生の時分、まさかスピーキングテストが大学入試に課されようとは夢にも思わなかったのでした。
国際日本学部もこの4月に3期生が入学しました。故に試験も3回行われたことになります。ただいくら先例があるとはいえども、今これを読んでいる高校生の皆さんはスピーキングテストに対して多大なる不安を抱いていることは事実かと思われます。ですから、このブログでは「こわくないスピーキングテストのススメ」と題しまして、その不安を取り除けるかもしれないこと、あるいは私の実体験などをつらつらと記していきたいと思います。ただ順序だったものではありませんので、気になる所だけ、お好きな所だけ、お読みいただければと思います。いわゆる「バイキング形式」であります。

まず1点目に、スピーキングテストへの心構えです。
正直に言いますと、感触という点からいえば、合格通知が来るまで「できた」という感触が確信に変わることはありませんでした。不安が積み重なったまま合格発表日を迎えたのでした。ただ受験するにあたっての環境というのは、それは、それは凄まじいものでありまして、あまり人に言えたものではないのですが、今回は意を決して書きたいと思います。
私は日本史受験だったのですが、日本史があまりにできなかったので絶望してしまいました。のちに意外と点が取れていたことを知り安堵しますが、あまりに運要素が強かったために、あの時の気持ちは今でも思い出すことができます。しかも(結果として)スピーキング試験最終組だったので、地理歴史の試験後に約100分も待たされたのです。この状況の中でできることは、ひとつ。そう、「寝る」ことだったのです。「寝る」?信じられないと思いますが、いつ呼ばれるともわからないまま、筆記試験の教室に待たされた私はふて寝してしまったのです。しかしながら、これがいい影響を及ぼしました。まず、睡眠をとったことで極度のプレッシャーから解放され、むしろ「落ち着いて考える余裕」を頭に与えた状態で試験に臨むことができました。正直に言ってこの大学に受からなければ背水の陣という所まで来ていた私は、最後の力を睡眠によって蓄えることができたと言っても過言ではなかったのです。
ここから言えることはそう、スピーキングテストは決して「緊張して」受けてはいけないということです。リラックスして、深呼吸して、必要なら寝てもいいです(個人的意見です!)。エネルギーを自分なりに貯めてから受けることをおすすめします。いかなる自分をも受け入れる客観的余裕を持って試験に臨みましょう。

2つ目に、準備編とでもいいましょうか、どのようにしてスピーキングテストを準備すればいいのか、これについて書きたいと思います。ただ準備といってもその詳細は人によって様々で、一つの解というものはありません。ですから参考ということでお願いしたいと思います。
共通テストに英語民間試験を利用するか否かという国の制度に不安を感じて、スピーキングを伴う試験を「一応受けた」「一応対策した」という人は少なくないはずです。一方、国は7月末に正式にこれを断念する方針を固めましたので、いよいよ外大のスピーキングテストというのは現行ではかなり珍しい部類に入るのではないだろうかと思います。故に民間試験とはまた違った「ダイレクトに大学受験向け」の対策が要求されるのも必至です。しかしながら、こうした試験ごとの「個別具体的な対策」というのが実はほとんど意味をなさないことをBCT-Sは教えてくれました。
まず、サンプル問題を見ればわかりますが、最初は短い日常会話の一部のような問題から始まります。そして、写真を説明した上で関連する質問に同時に答えたりなどして、だんだん問題が複雑になってきます。最終的には1分間の準備時間を踏まえて、3問の比較的難しめの設問に一気に答えます。この最後の3問はテーマが連関しているので、その点では比較的答え易いともいえます。ここからわかるのは、問題のバリエーションがあまりに多いので、付け焼き刃的に、あるいはパターン学習的に学習することは少し困難を伴うことです。英検のような、ある程度の級までは「パターン」でできてしまうような試験の形式も否定できないわけではありませんが、このような試験には残念ながら「穴」があります。それは、ほとんどの生徒が未知の出題形式になった時に対応できなくなってしまうことです。ただし、英検の面接問題は参考書が山のように溢れていますから、あまり心配することはないと言えそうです。これは他のほとんどの民間試験でもそうです。一方BCT-Sというのは新しい試験ですから、そのような想定問答のようなものが一般に出回っていません。まして過去問すら受験生こそ知れ、公式には出回りません。質問のアプローチも多様で機械的な対策は不可能です。ですから、サンプル問題(これは公式サイトから見られます)から形式を大まかに掴むことがあっても子細を知ることはできず、ただその全容を推し量ることしかできないのです。故に、「応用できる力」を養うことが必要なのです。

では、ここからが本題です。いかにして「応用できる力」を養うのか。それは、「日常的に使用すること」にそのカギがあります。「9割方日本語で授業を受けているのだから、高校で英語のスピーキングなど使えるわけがない。使う機会がそもそもない」と反論したそこの高校生のあなたは半分正しく、その批判は甘んじて受け入れることにして、他方で半分誤っている可能性が高いことを指摘したいと思います。そこには「自発的な実践」という視点が抜けていないか?ということです。何もスピーキングの力を涵養する場は授業内にとどまりません。ネイティブの先生や英語科の先生を捕まえて、昼休みなり放課後なりに英語の会話を仕掛けに行ったっていいのです。英語圏から来た交換留学生がいれば彼らに話しかけてもいいし、むしろ彼らと話すことによるメリットを感じることもあるでしょう。もちろん最初はうまく話せないと思います。スタートの威勢が良くてもすぐに蹴つまずくと思います。ただ、トライアンドエラーを繰り返すのみなのです。直前に「留学生と話すメリット」について示唆しました。彼らは文法上の誤りよりも「伝わること」を意識する傾向にあり、多少内容が「??」な状態でも会話が続行されます。むしろ聞き返してくれたり致命的なミスを笑ってくれたりしますので、自然に会話の内容が洗練されたものに修正されていきます。ネイティブならさておき、日本人の教師相手では友達のような感覚でこうはなりませんから、この点では大きなメリットと言えます。それから、初心者にとってはなんとなくでもいいので「伝わった」ことが大きな自信になります。このようにして会話の初動から「瞬間的に修正、対応、ひいては応用」できる力が少しずつ涵養されます。ただ何度も言いますが、これは従来型の「受け身」な授業では決して為し得ないことです。ディスカッションを行う授業などがあれば別ですが、そうではない環境にいる高校生のあなたは「使う機会を自ら狭めること」、これだけはしないで欲しいと切に願います。

さて、このようにトライアンドエラーを数ヶ月も続けますと、「自分の持っている語彙の中で」話せる力が身に付きます。この言い方で気づく人は一定数おられると思いますが、そうなのです。「語彙」や「慣用表現」そして「文法」は自分で身につけるしかない。ただ会話で言えばほんの僅かなことが進歩になったりします。小難しい文法はいらないのです。高校までで習ううちの、基本的なものがほとんどを占めます。例えば私の話をしましょう。私が「スピーキングの力が伸びたな」と自覚できた瞬間は実は中高6年間の学生生活で1回しかありません。能力は伸張し続けたのかもしれませんが、はっきり自覚したのはこの1回です。それは「確かに〜けれども、私はこう思う」という言い方を脳内で思いついたのに対して、 “Although〜,“を瞬間的に用いることができた時です。「たったこれだけか」と思われるかもしれませんが、 それまで“But”しか逆説の文脈で使えなかった私にとって、この用法が使えるようになった時にひとつ「英語脳」に近づいたような気がしました。留学経験ゼロの私にとっては、留学に行って帰って来た友達や帰国子女の友達に近づけたような気がして、とても嬉しかったのを覚えています。ただしこれは瞬間的に使えるようになれば効果は永続的ですが、民間試験の対策のように「機械的な」解答パターンとして覚えてしまうと案外使えません。むしろ脳内で思いつく言葉のスピードについていけません。ですから、日常的に使う機会をうかがっておくことが必要であり、平たく言ってしまえば、BCT-Sのようにパターンが多く過去問のない試験に対しては「ここぞ」という時に瞬間的に使えなければ意味がないのです。決して覚えることを否定しているのではありません。英語の文章を丸覚えすることは言語習得には非常に肝要なことでぜひ実践してほしいとは思いますが、それで全てであると思ってはいけない、ということです。それを踏まえて「応用できる力」を高めることが重要だと思います。

3つ目は、従来型の勉強をおそろかにしてはいけないということです。スピーキングは言語学習でいうと4技能の中でも全ての根幹になり得るもので、母語など、自然に学習する例であれば聴く→話す→読む→書くに移行するのですが、母語でないと逆転してしまうこともしばしばあります。残念ながら現行の日本の大学受験に依拠した教育では自然な言語習得を再現することはあまりできません。ですから、他の3技能を徹底的に高めて、スピーキングを下支えしていくことが必要です。特にリスニングでは、「自然な発音」に基づいた聴解の力を体得できればスピーキングでそれを活かすことが可能です。裏を返せば、3技能、とりわけリスニングがかなりできる状態でスピーキングだけが全くできないのはあり得ません。それは先述のトライアンドエラーが足りないだけです。ですから3技能を高めつつ、スピーキングの練習にも邁進していって欲しいと思います。
それから、BCT-Sでは発音も一つの観点になりますから、発音のいい人は多かれ少なかれ有利です。発音を蔑ろにする人は意外と多いですが、発音の真似っこもトライアンドエラーの一種です。ぜひ発音にも意識しながら練習を重ねることも忘れないで欲しいと願います。発音がいい人は自信にもなりますし、大学に行っても驚かれたり、褒められたりします。これに関しては教師の印象も良く、同時に自身のアドバンテージになります。

ここまでお読みいただいた方、お疲れ様でした。
だいぶ話が広がりましたので、ここで一度まとめておきたいと思います。

・スピーキングでは緊張してはいけない。素の自分を見つめ、全力を出すコンディションが重要!
・「パターン学習」ではなく、「日常」を学習に!
・「応用力」の根源は「3技能」から〜発音も含めて徹底的に鍛える!

以上を踏まえまして、スピーキングに対する漠然とした不安は消えましたでしょうか。逆に不安が増大した方は申し訳なく思いますが、やるべきことに対する何らかの指針は見つかったと思います。

そして、最後にもう一つだけ。
今までスピーキングについてつらつら書いてきましたが、最終的に自分を支えるのは「自信」です。私は留学経験もありませんし、英語を話すとなるともじもじして何もできない時期が長かったです。実をいうと私が志望校を変えて、それによってスピーキング試験を受けることを知ったのは高3の11月ですし、準備までに十分な時間もありませんでした。かなり不利だったと思います。そして今、大学でも私より上手に話せる人はたくさんいますし、自身のスピーキング能力に引け目を感じることもゼロではありません。
ですが、だからといって自信をなくすことだけはやめて欲しいと思います。全力でトライアンドエラーを繰り返し、たとえそれが満足のいくものでなかったとしても、それまで積んできた「経験」、これを大事に、そしてそれを揺るぎない「自信」に変えて、2月25日に臨まれることを強く願います。

写真は、十万石まんじゅうという埼玉県の銘菓です。県内でおそらく知らない人はいないだろう「うまい、うますぎる」の絵は、版画家であった棟方志功 (『わだばゴッホになる』というセリフで有名な方です)によって描かれたとされます。つくね芋の入った皮は餡の甘さを引き立て、結果食べやすく上品な味に仕上がっています。文字通り「うますぎる」非常においしいお菓子ですので、勉強のお供にいかがでしょうか。

ここまで読んでいただいて本当にありがとうございました。
あなたの高校生活に幸あらんことを。
それではまたいつか、お目にかかります。