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2つの言葉

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こんにちは。渉外局1年フランス語専攻の、なおです。大学では、一部対面授業が始まりました。換気のために開け放した窓から入ってくる、少し冷たい秋風に、紅葉した並木を通り抜け予備校へ向かった日々を思い出す、今日この頃です。
 さて、このスタッフブログに何を書こうか考えたとき、部屋の本棚にたてていた、予備校時代に使っていた手帳が目に入りました。久々にめくってみると、「模試の点数。泣いた」であったり、「記述問題、初めて一発オーケー、嬉しい」であったり、短いながらも、当時の私の感情がストレートに伝わってくる記述が多く、懐かしくなりました。「この出来事がなかったなら、今の自分はいなかっただろうな」、こうして振り返ってみると、涙してばかりだったあの頃が、懐かしく思えてくるのが不思議です。とても印象深い、密度の濃い1年でした。
 今回、その中から、2つの言葉について、記してみたいと思います。

①「40歳くらいになって、お酒飲みながら、『いや~、あのときの自分、頑張ってた!』って言えるくらい!」
 センター試験まであと100日を切ったある日、「あとどのくらい頑張れば合格する?」という漠然とした問いに対する答えとして、チューターの方がおっしゃった言葉です。「毎日〇時間勉強すれば合格する」や、「テキスト完璧にすれば大丈夫」などの答えがでてくると思っていた私は、驚きました。単純明快。それでいて、不思議と背筋が伸びる思いがしたことを、覚えています。結果に一喜一憂してしまい、心が折れそうになるたび、「今の私は、将来の自分が誇りに思えるほど、頑張っているだろうか?」と何度も自問しました。
 今振り返ってみると、そのときの感情は、おそらく、「40歳」「お酒」「『いや~あのときの自分、頑張ってた!』」というこれらの言葉によって、呼び起こされたものではないか、と考えることができます。大人の象徴(だと私が思っている)アイテム「お酒」、20歳にもならない浪人生の私と、倍以上の年月を生きた「40歳」の自分。その「40歳の自分」が、「お酒」を飲むたび思い出し口に出さずにはいられない自分、そんな自分ってどんなだろう。
「『毎日勉強〇時間』や、『テキストを完璧にする』ことの大切さは、生徒たちは十分わかっている。日々の勉強に追われている生徒たちが、忘れてしまいがちなのは、将来から現在をみつめることなのではないだろうか」。あのときのチューターさんの言葉には、このようなメッセージが込められていたように思うのです。だからこそ私は、不安になるたび、この言葉を思い出して、自らを奮い立たせていたのかもしれません。
 お酒が飲めるようになったら、お会いして、あの言葉についてお話ししてみたいです。

②「有志竟成」
「夏休み明けも頑張ろう」と、昨年度の夏に購入したファイル。ゴッホの「夜のカフェテラス」がプリントされています。
 私はこのファイルを「現代文専用」と決めていました。現代文の質問のときは、いつもこのファイルを携えていたので、講師の方は、ひょっとすると、私が紺色と黄色のこのファイルを持って現れるたび、「自分に質問かな……」と思っていらっしゃったかもしれません。
 有志竟成。最後の講義終了後に、ファイルにいただいた言葉です。窓の外では、チラチラと雪が舞っていました。
 調べてみると、有志竟成とは、「志ある者は事竟に成る=志を曲げることなく堅持していれば、必ず成し遂げられる」という意味でした。そこには、「志」という漢字についても述べられており、「『心臓』と『足』の象形・『出発線を示す横線』から成り立っている。出発線から一歩踏み出して『行く』、そこから『心の向かう所』という意味がうまれた」とありました。
 どこに行きたいのか(=志)が確かであれば、やるべきことは自然と見えてくる。スタートラインを越えて、自分がどこまでいけるかやってみよう。志をしっかり持って、物事に取り組めば、大丈夫。
————いただいた言葉を、私は、こう受け取りました。
 朝、予備校へ行き講義を受け、その後自習室で勉強して、夜、帰る。受験期の毎日を、一日、また一日と、乗り越えてこられたのは、ファイルにいただいたメッセージ、そしてなにより、熱心にご指導くださった先生方のおかげだと、そう思います。
「有志竟成」という言葉。大学生になった今でも、変わらず私の指針です。

 最後に。このスタッフブログを読んでくれている受験生のあなたへ。
 模試などで忙しくされていたり、近づいてくる本番の足音に、もうすぐだ、と眠れない日々を送っていたりすることと思います。ささいなことに一喜一憂してしまったり、弱気になってしまったり。私自身、受験期は気持ちが不安定で、泣いてしまうことが多かったように思います。
 けれども。受験期を終えた今、振り返ると、思うようにいかず涙してばかりだった日々が、そんな日々こそが、今の自分をつくった大切な時間だったのだと、心から、そう思うのです。
 試験本番、会場で問題を解くのは、たった一人、あなた自身です。しかし、その日を迎えるまでには、勉強を指導してくれた先生方や、同じ教室で共に目標に向かった仲間たち、陰ながら支えてくれたご家族のみなさん……様々な方々の姿があるのではないでしょうか。
 試験本番、真っ白な解答用紙に向かうとき。あなたは、決して一人ではありません。たくさんの人が、あなたを応援していることを、思い出してください。
 寒くなってきているので、体調にはくれぐれもお気を付けて。ラストスパート、応援しています。
 来年の春、キャンパスで、あなたにお会いできることを、楽しみにしています。

なお(渉外局1年)